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2005年 10月 05日
念力でテーブルの塩壷を動かし、精霊たちとテレパシーで交信することのできる少女クラーラ。彼女は、姉ローサの死後9年間一切しゃべらなかったが、ある日突如口を開き、姉の婚約者だったエステーバン・トゥエルバと結婚することを宣言する。クラーラとエステバーン、その子供たち、そして孫のアルバ。一族の三代に渡る壮絶な歴史が、今、語り始められる。
イザベル・アジェンデの処女作にして、南米マジックリアリズムの大傑作。浮世離れしたエピソードも入り混じるが、すべてが現実のこととして納得できてしまうのは、アジェンデの卓越した語りの力か、南米という地域の力なのだろうか。善悪では区分できない強烈な人々が織り成す世界に、飲まれるようにして読んだ。一族の要というべきクラーラの死後、一族はチリ・クーデターの混乱に巻き込まれていく(このあたりの描写はとても重苦しい)。しかし、何があってもまた立ち上がっていく人々の姿に、生きていくことのダイナミズムを感じて勇気付けられるのは私だけではあるまい。 イザベル・アジェンデ(作) 木村栄一(訳)『精霊たちの家』 国書刊行会(本体2418円) 評価:A+(A~E) #
by fuyu-shokubutsu
| 2005-10-05 02:17
| 読書記録
2005年 09月 23日
フィレンツェの画廊で、偶然ペルーの写真展に遭遇した私。そこに写っていたのは、私が忘れようとしていた存在、ペルーの密林奥深くに住む語り部の姿だった。
大学時代のひと時、親交を深めていた友人サウル・スラータスは、なぜあれほどまでに密林の人々に惹かれていったのか。マチゲンガ族の人々にとって、「語り部」とはいったいどんな存在だったのか? 偶数章ではサウルとの友情の行方が、奇数章ではマチゲンガ族の説話が(語り部の声を通して)語られる。章が進むにつれて見えてくるのは、説明できない熱に取り付かれ密林の人々に同化して行った、サウルの激しい魂の形だ。そして、サウルのような熱情を持つことができなかった語り手「私」は、密林の語り部の声とサウルの半生を小説にすることで、屈折したペルーへの愛を示そうとする。 マチゲンガ族の説話やサウルの生き方にも強く惹かれるが、私がもっとも共感するのは「私」の立ち居地である。情熱に身を投じることができない者は、「こちら側」に踏みとどまったまま書き続けていかなければいけない。しかし、そうした書き手によってこそ、情熱は人に伝えられるものなのだ。 マリオ・バルガス=リョサ(作) 西村英一郎(役)『密林の語り部』 新潮社(本体1942円) 評価:A(A~E) #
by fuyu-shokubutsu
| 2005-09-23 01:24
| 読書記録
2005年 09月 22日
東京都の地図に縄文時代の地図を重ねたとき、何が見えてくるか。中沢新一がひらく、新しい東京の扉。
縄文時代の東京は、洪積層と沖積層が複雑に入り組み、フィヨルド状の地形をなしていた。今ではまるで想像がつかないが、折り込まれている地図を東京駅のあたりや渋谷のあたりは海であったことが分かって仰天する。縄文の人々にとって、海に突き出した岬の部分は人間世界の境界線を示す特別な場所であった。そして、現代も、かつての「岬」には特別な力が宿り続けている。新宿、東京タワー、皇居…。 縄文時代からの歴史を縦横無尽に紐解きつつ、思想家は東京の姿を大胆に捉えなおしていく。壮大な論証に鳥肌が立つような部分と、思わず吹き出してしまうような妄想(?)部分が入り混じり、読みやすくエキサイティングな一冊となっている。これを読まずに東京を歩くのはもったいない!東京に生きる人は、必読。 中沢新一(著)『アースダイバー』 講談社(本体1800円) 評価:A(A~E) #
by fuyu-shokubutsu
| 2005-09-22 11:19
| 読書記録
2005年 09月 09日
河岸につながれた動かない船の上で、彼は毎日を過ごす。ファックスで手紙を送り、郵便配達夫にコーヒーを振る舞い、死に近い大家を見舞う。それは、人生の河岸でしか味わうことのできない、かけがえのない日々だ。
段落ごとに飛躍するイメージ。K。並列つなぎ。正直者は馬鹿を見るか。堀江敏幸が好きな人には、何もかもがこたえられない逸品と映るだろう。(もちろん、こんなに何も起こらない小説のなにが面白いんだ!という人もいるかもしれない。しかし、その人と私は良き友人にはなれないだろう。)いつまでも終わらなければいいのに、と思いつつ、一気に読んでしまった。 堀江敏幸(作)『河岸忘日抄』 新潮社(本体1500円) 評価A+(A~E) #
by fuyu-shokubutsu
| 2005-09-09 02:16
| 読書記録
2005年 09月 09日
ストリート・グレインジの屋敷にある氷室で、謎の遺体が発見された。身体を何者かに食い荒らされ身元のわからなくなったその男は、十年前に失踪したこの家の主人なのか。そして村の噂どおり、この家に住む三人の女たちが殺人者なのだろうか――。
謎めいた導入部、なかなか見えてこない事件の全容、個性的なキャラクターたち。読み応えのあるミステリーである。多くは語らないが、謎を解くものの「倫理」の問題に踏み込んでいるところに好感を覚える。マクロクリン刑事の心境の変化には、やや強引さを感じた。 ミネット・ウォルターズ(作) 成川裕子(訳)『氷の家』 創元推理文庫(本体760円) 評価:C+(A~E) #
by fuyu-shokubutsu
| 2005-09-09 02:07
| 読書記録
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